鏡の国2
落ちる。
ねぇ、知っているかい。僕は重力の色をした傘なんだ。
ねえ、知っているかい。僕の姿を。
セタは地に着かない足で宙を蹴りながら居場所を探していた。ずっと前からこうだったような気がするのだ。ずっと前から足は地に着かないままで、ずっと前から、方向はないままで、ただ行き先だけがセタを前に進めてきた。だが、その行き先でさえ、今ではおぼろげになっている。
遠くから聞こえる音のせいか、セタはかすかに方向を思い出した。方向を思い出したとたん、重力がセタを捕らえた。
落ちる。
僕は落下する傘の色をした重力だ。
降り立った地は灰色をしている。セタはついに世界の底へやってきたようだった。