インテルメッツォ

インテルメッツォ)

 セタは探している。自分が何を探しているのか探している。セタにはずっと、何かを探す必要はなかった。でも、名前の国を出てからセタは、ふと何かを探してみようかという気になった。
 とはいえ、あてどなく彷徨っているだけのセタであったから、そもそも何かを探すというのが難しい。何かを探すというのは、そも、どういうことだったろう。セタはない記憶を探り、まだ見ぬ未来に目を眇めた。何か。僕はいったい、なにをすべきなのだろう。
 乳白色の闇から背の高い門へ出たとき、セタは自らの分身が膨大に居並ぶさまを見た。近づけば近づき、揺らげば揺らぐ。それは鏡であった。乳白色の中に、セタは浮かんでいた。
「ようこそ。ふたごの国へ」
 静かな声が、鏡を開いた。セタは誘われるがまま、鏡の奥へ姿を消す。